飴色蝶 *Ⅰ*
「カナメ、何を馬鹿な事を
 言っている
 そんな訳が無いだろう
 
 会澤組、組長が、この俺を
 騙そうなどと思うはずは無い
 もし、そうなら、俺も甘く
 見られたものよ
  
 兄貴は作り上げた高月組を
 女の為に捨てた
 その後俺が、どれ程の苦い汁
 を飲んで、この組を背負って
 這い上がってきたことか
 
 俺がいたから、今の高月組が
 ある、そんな俺を、会澤組が
 見縊るものか」
 
「先代、口がすぎました
 すみませんでした」

要は、深く頭を下げた。

「カナメ、後の事は、お前に
 任せる
 お前の大好きなイチヤの
 兄貴が作り上げたこの組の
 未来、よく考えてみてくれ
   
 わたしの話は
 これで終わりだ
 早く、イオリの元へ」

「はい、失礼します」

要は、庵を守る為に菫の家の
近くへと車を走らせる。

その頃、庵は
まだ帰って来ない菫を
車の中で待っていた。
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