飴色蝶 *Ⅰ*
「イオリ、心配しなくていいよ
 私はもう、シュリさんの
 店には行かないから」

私の言葉に安心した庵は、少し
戸惑いながら、優しい声で
私に問いかけた。
 
「すみれ

 どうして泣いてた?」

貴方は、私が泣いていた事も
知っているの。

「あれは、何でもないよ」

無理に微笑んでみせた私を
庵はじっと見つめる。

「何でもないなら
 お前は泣かない
   
 どうした、シュリに
 何か言われたのか?」

「言われたんじゃないよ
 彼女は、勘違いしているだけ
 なの、私と貴方が将来
 一緒になると思ってる
   
 そんな約束
 私達の間には無いのに・・・」

涙が出そうになった私は
庵から顔を逸らした。
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