飴色蝶 *Ⅰ*
彼は、過去に愛している者達を
失った。
 
そして、とてつもない悲しみ
寂しさを知る。

悲しみの中で彼は
ふと、思った。

「俺が、これから出会い
 愛する人達も
 いつか
 消えて亡くなってしまう
 いつか
 俺の元からいなくなる
   
 その時、俺はまた
 この深い悲しみと
 向き合うことになる  
 
 とても絶えられそうに無い」
 
彼の胸の奥、ずっとずっと
深い場所にある悲しみに
触れた私は、両腕で庵を包む。
 
「俺がずっと、人を愛する事
 を避けて、いろんな女と
 軽い関係を続けていたのは
 将来、極道になるからだとか
 そんな、かっこいい話
 じゃない
   
 ただ、失う事が怖かった
 だけだ・・・・・・
 
 俺は、どんな事があっても
 すみれ、お前だけは
 失いたくない」

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