飴色蝶 *Ⅰ*
「分からない、ただ
 この涙は、嬉し涙だよ」

「嬉しくても涙が出るんだ
 なんか、大変だな」

そう言って、庵は微笑んだ。

「イオリ、笑っていられるのも
 今だけだよ
 
 私、怒ってるもの」

「今度は、怒るの?」

「怒るよ、怒るに決まってる
 じゃない
 やっと勇気出して、貴方に
 告白したのに・・・
 乙女の純情を踏みにじって
 おいて

 何が今更
 俺も好きだったよ
 どれだけ私が・・・」

「ちょっと待てよ
 俺も好きだったとは
 言ってない」

「じゃあ、言ってよ
 ねぇ、どうしてあの時
 そう言ってくれなかったの」

彼が私に気持ちを伝えなかった
のは、きっと、私を思っての事
だと知っているのに
  
つい意地悪を言ってしまった。
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