飴色蝶 *Ⅰ*
「先輩、先輩

 せんぱい・・」

彼には、私の声は

届かない。

私は、声の限り

彼の名を叫んだ

「イオリ・・・」

立ち止まり振り返る彼に
私は、自分の思いの丈を
口にした。     

「私は、やっぱり
 
 貴方が好きです
       
 あの頃から、ずっと

 貴方だけが好きなの」
   
その言葉は庵に届き

彼は

一歩ずつ菫へと
歩み寄りながら言う。

「俺なんか、やめろよ」

菫は、首を何度も
左右に振る。

「ううん

 貴方がいいの」
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