飴色蝶 *Ⅰ*
二人は、ベッドに向き合った
まま横たわり、ずっと
話をしていた。

下着だけの姿で、寄り添って
薄いタオルケットに身を包む 

庵の手が、私の髪に触れる。

「あの日、お前から目を
 逸らさずに、自分の本当の
 想いと向き合っていれば
 俺は、極道にはならなかった
 だろうな」

「本当?」

「ああ、お前が悲しむ事は
 しない
 だけど、あんな生活を
 続けていれば、もっとお前を
 悲しませたかもしれない
 
 俺の自由になる時間など
 一秒も無かった
 仕事を休めば、生活は苦しく
 なる

 生きる事を止めるなら
 仕事も辞められる」

彼の言葉は、今まで
何の不自由もなく生きて来た
私の胸に、ズーンと重く響いた
< 391 / 488 >

この作品をシェア

pagetop