飴色蝶 *Ⅰ*
自分と年端も変わらぬ、庵の瞳
は真剣で棟梁に激怒され罵られ
ても、庵は必死で食らい付く。
   
「そして、やり遂げたイオリに
 親父は満足気に笑いかけた
 その帰りに、そいつが俺と
 同じ年だという事を聞いて
 俺は驚いた
 それ以上に驚いたのは彼は
 学校へ通い、学校が終われば
 現場へ来て休みも無く働き
 病気の妹の入院費と学費と
 生活費を稼いでいると言う」
 
本当は、この仕事の後にも庵は
違う仕事を掛け持ちしていたが

彼の腕を見込んだ棟梁が
その全てを辞めさせて彼の生活
に必要なギリギリのお金を
給料で支払う事を約束して彼が
使い物になるように全ての技術
を教え込むことにした。

「親父の仕事がこんなに
 かっこいいものだという事を
 イオリを通して初めて知った
 俺は翌日から、親父の下で
 イオリと一緒に働いた
    
 俺がこの道を進む、きっかけ
 になったのは
 
 イオリに憧れたから、これは
 絶対、アイツには内緒な」

幹生さんは照れながら微笑んだ

結局、庵は棟梁の反対を
押し切って大工の仕事を辞めた
らしい。
< 410 / 488 >

この作品をシェア

pagetop