飴色蝶 *Ⅰ*
「お願い、約束して
 抗争が落ち着けば、必ず
 私に逢いに来てくれると」

「約束する、真っ先に
 お前に逢いに行く」

お前に逢いに・・・

もう、放さなきゃいけないこと

私は分かってる。

だけど、この手を放せない。

庵は、あの時のように言う。

「着いたよ、そろそろ
 放してよ」

そう、六年ぶりに逢った
あの日のように。

庵の言葉に、力を緩めた私の手
が貴方から放れた。

もう、降りなきゃいけないこと

私は分かってる。

座ったまま動けずに、俯いて
涙を堪える私に気づいた庵は
両腕で優しく包んでくれた。

そして強く、息もできない程に
強く、抱きしめてくれた。
 
「心配するな、すぐに逢えるさ
 仕事、頑張れよ」

私は、彼の肩に頬を寄せて
何ども頷いた。
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