飴色蝶 *Ⅰ*
私は振り返り、貴方に手を振る
 
サイドガラスの奥、貴方の
唇が動いた。

唇の動きを読み取れなかった
私は、首を左右に振り
人差し指を一本立てて言う。

「もう一回」

彼の唇の動きから、彼の声が
聞こえた。

「あいしてる(愛してる)」
  
そして庵は、私を見て一度だけ
口元を緩めた後

前だけを見つめ、車は走り出す

私の頬を、一粒の涙がつたう。

私は、走り去る車に向い
手を振り小さな声で呟いた。

「あなたを、愛してる」

貴方が、私に逢いに来てくれる
日をずっと、ずっと待ってる。

不安な思いは、決して
・・・消えない。

『お前だけには、あんなに辛く
 悲しい想いはさせない』

貴方の言葉を、信じてる。
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