飴色蝶 *Ⅰ*

諦める事

歩き出した私の前に
立ちはだかる、一人の男性。

彼は、サングラスを外した。

「どうして、ここに貴方が」

すぐ触れられる距離に
彼は立つ。

私は、ゆっくりと後ろに一歩
二歩と下がり彼と距離を取って
その場から逃げ出そうとした。

彼の手が、私に触れようとした

「触らないで、お願いだから」

菫の中に、あの日の見知らぬ
男性に抱きしめられて
口づけを交わされた
悍ましい記憶が甦る。

「私に、近づかないで・・・」

彼女を、困らせたい訳じゃない
  
「ごめん
 おまえが嫌がることは
 何もしない、少しでいい
 おまえと話がしたい」

「私には、貴方と話すこと
 なんて、何もありません」

「スミレ、おはよう」

彼の後方、少し離れた場所から
私を呼ぶ、同僚の声が聞こえた

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