飴色蝶 *Ⅰ*
「おはよう
 私、行かなくちゃ・・・」

私は彼に一礼して、その場を
離れ、足早に彼女の元へ向う。
 
彼は、その場に立ち
大きな声で言う。 

「今、起こっている抗争を
 一日も早く止めた方がいい」

彼の言葉に、私の足が止まる。

「大切な人を守りたいなら」

彼の言葉に、私の体は震える。

振り返らずに立ち止まったまま
の私に、彼は言う。

「これから抗争は、もっと
 激しくなる
 一日でも早く終わらせる事が
 できるのは、たったひとつ
 君が、高月組三代目組長
 高月 庵を諦める事だ」

彼の言っている意味が、この時
の私には、分からなかった。
 
その夜、庵は先代の正二に
呼び出されて、朱莉の店へ
護衛と共に向った。

店には、正二と、会澤組組長
の一人娘、巴が、賑やかに
お酒を飲んでいた。
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