飴色蝶 *Ⅰ*
庵に今の嬉しい気持ちを、早く
聞いてもらいたいと思った私は
携帯電話を操作して、アドレス
を開いたが、仕事の邪魔に
なってはいけない・・・

そう思い直して、携帯電話を
閉じポケットにしまった。

庵からの電話を、待とう。

この話を聞けば、貴方はきっと
自分の事のように喜んでくれる

きっと・・・ 

貴方が今、痛みに耐え、仲間の
死を悼み、深い悲しみの中に
いることを

私は、知らない。

自分の為に、人が死ぬ・・・

治療を終えた庵は、腕を
通さない上着を肩にかけ
ゆっくりとベッドに近づく。

「・・・親父」

要は、唇を噛み締めて
男泣きする。

そこには息絶えて、目を閉じ
眠る舎弟、シバの姿があった。

彼は、もう二度と

目を開ける事は無い。
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