飴色蝶 *Ⅰ*
庵は黙ったまま、何ひとつ
シバに声をかける事は無く

彼に触れ、彼を腕に抱き
肩を震わせて涙を流した。

肩からずり落ちる上着
庵の白いシャツは紅く
染まっていた。

悲しい出来事に、庵の心は
悲鳴をあげ、怒りが込み上げる

会社から少し離れた場所に
私は立つ。

何も知らない私に、彼は言う。

小雨が降り出し、ポタポタと
頭や頬に落ちる。

彼の声を聞きながら、私は
雨足が激しくなりどんどん地面
を濡らしていく様を

見つめていた。

彼の言葉に、私は息苦しさを
感じる。

イオリ・・・息ができないよ。

助けて。

貴方の白いシャツが、紅く
染まる夢を思い出して

私の体は震える。

新は、そっと優しく菫を
抱き寄せた。

「大丈夫、組長は無事だ」

その言葉に、私は救われる。
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