飴色蝶 *Ⅰ*
「イオリ、大丈夫?」

「ああ・・・」

詰まる言葉・・・

庵は、悲しみを噛み締める。

「イオリ、怪我はどうなの
 痛む?」
 
「弾が掠っただけの
 大した怪我じゃないさ」

「弾が掠っただけって・・・
 やっぱり、逢いたいよ
 どうしても逢えない?」

「無理だ、また、いつ狙われる
 とも限らない油断はできない
 俺のために誰かが死ぬのは
 もう、たくさんだ
 すみれ、ごめんな」

「ううん、謝らないで、イオリ
 は何も悪くない
 逢えない事、分かっているの
 に逢いたいだなんて我侭・・
 ごめんなさい」

電話越しに、沈黙が続く。
 
私は、庵を困らせてしまった事
を後悔した。

庵の声・・・
 
「今すぐ、お前に逢いたい」
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