飴色蝶 *Ⅰ*
「どうして、ここに」

「お前に逢いたくて
 
 堪らなくなった」

私は、貴方に言わなきゃ
いけない。

さよならと・・・・・・

神様がくれた最後のひと時

今日だけは誰も二人の邪魔を
しないで、お願い。

貴方の腕に、私は甘える。

彼の手が、優しく私の髪に
触れた。
 
この手に触れる事は

もうできなくなる。

涙が、頬を伝う。

「すみれ、どうした?」

「何でもないよ
 貴方に逢えて、うれしいの」

私は、庵の気持ちを

全く考えずに

自分本位に

別れることを決め

そして、彼に告げる・・・
< 471 / 488 >

この作品をシェア

pagetop