飴色蝶 *Ⅰ*
これが、最後・・・

余計な事を全て忘れて

貴方だけを感じたい。

貴方の唇が優しく

私の唇に触れる。

私に触れる、貴方の冷たい手が
ほんの少し熱っぽい、私の肌を
冷やしてくれる。

庵の全てが、心地よい。

貴方の瞳に見つめられ
その手に触れられて

私の胸の中、刻む時計が
一秒、一秒と狂い出す。

これで、最後・・・

浮かんでは消える、その言葉に
私の胸は締め付けられ、瞳に
涙が溢れるのが分かった。

涙で彼が見えなくなる事だけは
避けたい。

私は唇を噛み締め、今は
何も考えない

そう自分に言い聞かせて
庵だけを見つめた。

何重にも巻かれた、右肩と
右腕の白い包帯。
 
貴方の痛々しい姿に

私は息を呑む。
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