飴色蝶 *Ⅰ*
痛み止めや抗生物質の薬
のせいか、庵は
少し話した後、すぐに
眠りについてしまった。

貴方と繋いだ手・・・

庵は、安心して眠る。

私は眠る事も忘れて
貴方を見つめ、貴方に触れ
貴方の寝息をずっと近くで
感じていた。
  
貴方と過す時間を、一秒だって
無駄にしたくない。

朝は訪れ、差し込む眩い光に
庵は、ゆっくりと目を開けた。
  
至近距離で見つめる私の視線に
驚く庵の寝ぼけ顔が可愛くて
私の胸はドキドキする。

「おはよう」

「ああ、俺、いつ寝た?
 すみれ、起きてたのか?」
  
「うん、眠れなくて
 ずっと、あなただけを見てた
 ・・・寝言、言ってたよ」

「嘘、本当?」

「うそ」

些細な事で、こんな風に
笑い合ったり、貴方の笑顔を
独り占めする事は

もう、できなくなる。
< 474 / 488 >

この作品をシェア

pagetop