飴色蝶 *Ⅰ*
携帯電話を閉じる庵に
私は聞いた。

「イオリ?
 
 出向くって 
 何処へ行くの?」

庵の返答は無い。
  
「ねぇ?答えて
 ・・・お願い」

庵は、私を見る事無く
何も言わずにズボンを履き
シャツを身に纏った。

「ねぇ、イオリ、教えて」

不安な瞳で見つめる私の頬
に触れる細く長い指。

「・・・・・・」

彼は、何も話してくれない。

けれど、黙っている事で
何となく、シバさんの敵を討つ
為に、彼が何処かへ出掛けて
行くような気がした。

庵の背中に、私はしがみ付いた
 
「行かないで」
  
庵の体に回して組む私の手に
彼は触れる。

「すみれ、大丈夫だ」

「行かないで・・・お願い」
< 476 / 488 >

この作品をシェア

pagetop