飴色蝶 *Ⅰ*
涙を浮かべ見つめる私を
抱きしめて、庵は言う。

「心配ないさ
 お前に逢えて幸せだった」

幸せだった・・・

庵の言葉が私の胸に引っかかる
 
庵は、そんなつもりで言ったん
じゃ無いかもしれない。

だけど私は、過去形で話す
彼の言葉の裏に潜む
さよならの文字を見たような
気がした。

もう逢えないかもしれない
・・・庵の想いを。
 
そう感じてしまった、私の心は
苦しくて・・・

彼を、止めたい。

この抗争を、止めたい。

どうしても、止めたい。
 
私は、小さな声で呟いた。

「行かないで」

「電話するよ」

見つめる庵から目を逸らし
私は、彼と距離を取った。

「・・・もう、いいよ」

「すみれ」

 
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