飴色蝶 *Ⅰ*
あの日の貴方の、悲しい瞳を

私は二度と忘れることが
できない。

何度も何度も、繰り返し

私は自分に問いかける。

私の選択は、間違っていた
のかもしれないと・・・
  
今の貴方を、止められるのは

誰でもない・・・

この私だけ。

そんな事を今更、何度
思い返しても、もう遅い。

私は、庵のいなくなった
部屋に一人きり。

静寂の中、車のエンジンが
遠退いて行く音を聞き
私は急いで窓の外
走り去る車を見つめた。

庵を乗せた車が、見えなくなる
のと同時に強風が吹き荒れ
菫の体を駆け抜けた。

二人の時間が、あっという間に
過ぎ去ってしまったように。

貴方は一人きり・・・

歩き出す。
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