飴色蝶 *Ⅰ*
庵の亡くなった父親の血
を分けた実弟で
叔父にあたる人だ。    
    
高級車に乗車する会長を
見送る女性がいる。
   
華やかなドレスを身に
纏った彼女の美しさには
誰もが目を奪われる。

男を喜ばす事の全てを
知っている彼女の身振り
手振り、佇まい、話し方
微笑みは男達を魅了する

「ショウさん

 じゃあ、明日」

「ああ」

ドアを閉めようとした
庵に、正二は言う。

「イオリ、すまないが
 朱莉(しゅり)を
 家まで
 送ってやってくれ」

「はい、分かりました」

正二を乗せた車は
深夜の街に消えて行く。
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