飴色蝶 *Ⅰ*
「私が話を付けてくる
 
 その愛人のお店の名前教えて
 きっとそこに、ユキの彼は
 現れるでしょう」

更紗と二人で何度別れることを
進めても、雪乃はその人の事を

『心から愛している』

と言って、私達の話を
聞いてくれなかった。
     
だけど、彼の事を話す雪乃の
幸せそうな顔を見ていたら
私達はそれ以上、彼女に何も
言う事ができなかった。

「スミレ、相手は本物の筋者
 なんだよ、話なんて聞いて
 くれるわけが無いよ」

「じゃあ、ずっとボロ雑巾に
 なっても我慢するの?
      
 私達、まだ二十三歳なんだよ
 いつまで、どこまで
 我慢すればいいの」
  
私なんかよりもずっと素敵な物
を作り出す事のできる雪乃の事
を学生時代から、ずっと尊敬
していた。
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