飴色蝶 *Ⅰ*
店内はその光景にざわめき出す
    
朱莉がサッと近づいて、興奮
する菫を宥めようとした。

「お客さま、こちらでは他の
 お客様のご迷惑になりますの
 で何かお話したい事がござい
 ましたら、この店の責任者の
 私がお伺いします」

自分と年端も変わらないのに
冷静な態度で対応をする彼女の
少し高い声が、耳に煩わしく
聞こえて頭が痛くなる。

「貴女に、話すことなんて
 何も無いわ」

会長の正二の方を、真っ直ぐに
見つめた菫は言う。     

「私は、会長さんだか
 組長さんだかに話があるの
      
 親友のユキノの事で、彼女と
 別れてあげてください」

辺りには、組員達が数名、菫を
いつでも取り押さえられるよう
に待機していた。
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