前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―
どーするんだよ、これ。
数日は消えないじゃないか。
い、イカガワシイ疑いを掛けられてしまいそうで恐いんだけど! 学校に顔出せないんだけど!
こんなの鈴理先輩の追っかけにでも見られたら……想像するのもオッソロシイ。
「せ、先輩! これは!」
ぎこちなく先輩に目を向けて説明を求める。にこやかに彼女は笑った。
「嬌声を聞いた上に、上半裸の空に寄り掛かられたんだぞ? 何もしないわけないではないか。なあ?」
「きょ、嬌声なんて漏らした覚えないっすよ!」
「何を言う。嬌声を漏らしながら『先輩、気持ちいい。もっと』と言ったではないか」
それは汗を拭うタオルの冷たさが気持ち良かったと言いますか、嬌声っていうのはタオルの冷たさで声が漏れただけと言いますか。
とにもかくにもイカガワシイ表現しないで下さいよ!
先輩にヤられてる感があるじゃないっすか。
押し倒されてイヤンされている光景を想像する……自分で想像して酷くおぞましいものに思った。
俺のツッコミに鈴理先輩は涼しげな顔をして更に説明を重ねる。
「それこそ最初は寝巻きに着替えさせて抱擁だけにしようと思ったんだが、それだけでは気が済まなくてな。キスを少々。深いキスも少々。最後にキスマークを付けようと思い立ち、気付けば沢山の証が付いたというわけだ。
うむ、なかなかな肌をしているな、空。すべすべしていた上に、むっちりとした肌の弾力がまた欲情をそそる」
「や、やめて下さい。先輩、美貌が台無しになるような台詞っす」
つまりセクハラ(んでもって変態)発言だ。気付いてくれ、先輩!
あと、キスもしたんですね。してくれちゃったんですね。ディープもしてくれちゃったんですね。
寝込みを襲わないで下さいよ、俺、先輩の傍じゃ気が抜けないじゃないっすか。
それにしてもこれ、どーしよう。
見事に制服じゃ隠し切れない場所に付けてくれちゃって……ほんと情事後みたいだな。ヤッたことないけどさ。
うんぬん鏡を見てどうしようかと考えていると、
「ほらほら病人は寝ておく」
先輩が歩み寄って来て軽々と俺の体を持ち上げる。拍子に持っていた手鏡が畳みの上に転がった。