前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―
「今度彼女とデートをしようと思うのだが、センスの無い服装では男が廃ると思うのだよ。例えば、彼女が私服で、僕が制服じゃあ、彼女にも申し訳ない。
周囲の目にも毒だし、僕は勿論、彼女も悪く言われるかもしれない。
『なんであんな男と付き合っているんだ? センスがないのではないか?』と」
「あ、それ思います。彼女に気を遣わせるというかー、なんというかー」
「やはり服装は大事だな。彼女に見合う且つ釣り合う男にならなければな」
効果はバツグンのようだ。
近くで食事をしつつ談笑をしていた空が、なんだか居心地悪そうな顔を作る。
これぞ、『お前の身の程を知りやがれ作戦B』である。
ちなみに作戦Bは省略形なので宜しくである。
こうしてカップルの姿を客観的に教え込むことで、向こうの空気がギスギス。
おでーとの空気もギスギスしていき、デートどころか関係はおじゃーん。
まったくもって自画自賛ではあるが、完璧(パーフェクト)な作戦だ。
自分達が直接手を下すこともなく、周囲の目を気に始めて空気がギスギスしていくのだから!
ああほら、思った傍から空が「なんかすみませんっす」改め服装のことを、我等のアイドルに謝罪している。
アイドルはちょっと不機嫌になって「無用な謝罪は受け取らないぞ」なんて男前、じゃない、女前な発言を。
……ん?
「空は何を気にしているのだ? 周囲に浮気心を持つくらいなら、あたしだけを見ておけばいいではないか」
「浮気心って、先輩! いやでも、俺の服装で、もしかしたら……先輩……悪く言われているかもしれないっす。先輩は素敵にバッチシな服装なのに、俺……うーん、KYな服装と言いますか」
「だから、周囲に浮気心を持つなと言っている。気にしているなら、先程店で服を買えば良かったな。あんたの体払いで」
「かっ?!」
……んん?
「あまり周囲に耳を傾けて不安を抱くようなら、この場でべろちゅーしてやる」
「ぶふっ! ぱッ、パスタが変なところっ、ゲッホゲホッ、ゲッホ! ……せ、先輩っ、な、なんてことを」