前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―
05. 初おでーと物語(後)
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楽しくも愉快、時々ハラハラドキドキな昼飯を堪能した俺は、先輩と一緒にパスタ店を後にして再び百貨店内をぶらぶらっと歩いていた。
太っ腹に彼女に奢ることもできたし、腹ごしらえも済んだことだ(結局パスタは全部食べてしまった)、次は何処に………うん、ごめんなさい。
俺は嘘をつきました。
どこら辺から嘘をついたかっていうと、パスタ店を後にした辺りから。
パスタ店に出るや否や、彼女は俺の腕をガッチリホールド。
ぐわっしぐわっしと足音を立てながら、ズルズルと俺を引き摺って何処かへ向かい始めたんだ。
焦って何処へ行くのかと聞いたら、先輩、ニッタァと口角をつり上げてヒトコト。
「空が周囲の目を気にしたものだからな、行く所は一つ」
先ほどとは違う、ブランドファッション店に入った先輩は俺を置いて、服の入った棚を覗き込み始めた。
置いてけぼりを食らい、どうすれば良いか分からずおとなしく彼女の様子を見ていると、彼女はレディース用のワイシャツにネクタイ、ミニスカートを選んでクレジット払いで購入(高校生でクレジットカード?)。
店員さんにここで着たいことを告げ、試着室へ飛び込んだ。
そして俺の下に戻って来た彼女の姿は、超ボーイッシュでカジュアル系から一変。学生に近い服装となった、
似合うには似合うけど、さっきの方が大人っぽかったし格好良かった。
それなのに彼女はわざわざ服を買って着替えてしまった。
「これでお揃いだろう?」
先輩は満面の笑顔で浮かべる。
わざわざ俺のために着替えてくれたあたし様。
俺が周囲の声や目を気にしちまったもんだから……しかも俺の性格を理解しているのか、服を与えるんじゃなくて(与えるとか同情されているようで腹立つしな)、自分が合わせる選択肢を選んでくれた。
嬉しいような、申し訳ないような。
ちょっと途方に暮れたような気持ちを抱くけれど、彼女は気にせずに「お似合いのカップルだな」
笑みを返し、
「先輩はなんでも似合うっすね」
敢えて服を着替えた話題に触れず、服装を褒めた。
申し訳ない気持ちにもなるけど、気に病んでいたら気遣ってくれた先輩を落ち込ませるかもしれない。