前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―
「フン、相変わらず性格的に可愛くねぇ女オトコめ。姉妹たちとは大違いだな」
相手はあたし様の毒舌に慣れているようだ。平然と毒を返している。
「姉妹は姉妹。あたしはあたしだ。ヘタレ男」
「だあれがヘタレだ。泣かすぞ。ああ違った、鳴かすだったな」
「ほぉー。あたしを鳴かせる? たわけたことを言ってくれる。あたしがあんたを鳴かすなら分かるけどな。ま、あんたを鳴かすなんてごめんだ。あんたの喘ぎ声を聞いて、誰が喜ぶ?」
「全国の女性たちじゃねえの?」
「ははっ、自意識過剰にもほどがある発言だな」
………ついていけねぇ、この、お下品な会話。完全に俺は蚊帳の外に放り出されたよ。
唖然としてやり取りを見つめていた俺は、さて、どうやって輪に入ろうかと思案を巡らせる。
輪に入りたいわけじゃないけれど(寧ろ品のない輪に入りたくないけど)、このまま放置プレイされるのも些か辛い。
先輩を罵っているAさんのお名前くらい知りたいしさ。
流れからしていただの同級生ではなさそうだし。
いざ口を開かんと唇を微かに動かした直後、「お前が豊福か」Aさんに名指しされた。
向こうは俺のことをご存知の様子。
「苗字のわりに、財力のない庶民とは聞いていたが……見るからにだな」
「…………褒めてくれてどもっす」
なに? 貴方様は豊福って苗字を馬鹿にしているのか?
内心でムカッとする俺は、「この方誰ですか?」先輩に質問を投げ掛ける。フンッ、鼻を鳴らして先輩は答えてくれた。
「こいつは二階堂財閥の次男坊。二階堂 大雅(にかいどう たいが)だ。一応、あたしの幼馴染みで同年だ。いや腐れ縁というべき男かな。自称肉食系男子らしいが、あたしから見たらヘタレでケツの穴が小さい男だとしか思えない。
しかも、あたしに指図ばかりしてくるという。
大体このあたしに指図、だと? あんたみたいな似非俺様キャラなんぞ、需要なんてないんだからな! 需要者がいたら、そいつの顔を拝んでみたいものだ。いいか、俺様キャラがリアルにいたらウザイだけなんだぞ。
態度がでかいというか、ジコチューというか、えらそうというか。
ケータイ小説で俺様が流行っているからって、リアルワールドがお前のような俺様を欲していると思うなよ! 阿呆め!」