前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―
06. サバイバル準備期(その1)
□ ■ □
「はい? 竹之内先輩の家に泊まりに行く? ……そうか空、ついに腹を決めたのか。あーオメデトウさん! 友達として祝福するべきところだよな、笹野!」
「え、あ、僕に振る? ……ゴッホン、えっと、後日赤飯でも炊いて持ってきてあげるよ」
とある体育のワンシーンにて。
クラスの集合が遅いと体育教師に怒鳴られ、罰としてグランドを十周するよう言い付けられた俺等は気だるく校庭を走っている。
真面目に走る奴もいるけど、俺とフライト兄弟は比較的不真面目に校庭をちんたら走っていた。
俺は走りながら二人に報告兼相談を持ち掛けてみた。
今週の土曜、先輩の家に泊まりに行くんだけど……どうしたらいい? と。
そしたらエビくんは戸惑い交じりで一笑をしてくるし、男前にニコッとアジくんは微笑んでくれるし、各々祝福の詞を贈ってきてくれるし……期待外の反応をされた。
赤飯以外にもなんか贈ってあげるよ、空の好きなイチゴミルクオレも付けてやるよ、と二人からのんびりのほほん和気藹々と言われてしまい、俺はフライト兄弟に軽く唸った。
「誰もまだ一晩の過ちを犯すなんて言っていないだろ? 俺、そのつもりはないんだから。先輩の家に来るよう誘われたから家に行く。それだけだって」
「え、何を言っているの?」
「冗談かそれ?」
声を揃える二人に大真面目だと突き返す。
冗談もコノヤロウもドチクショウもあるか。
俺は真剣だよ。
食われるつもりなんてまったくもって1ミリもないんだからな! ……に、逃げられるかどうかは別問題だけど。
大反論にフライト兄弟は「そりゃあ」「無理でしょ」白々しく肩を竦めてきた。
「空。お前なぁ。自然の摂理を考えてみろ。お前の決断は肉食動物の住処に足を踏み込むっつーのと一緒だぞ。
餌のお前が肉食動物の前に立ったらどうなる?
ガブリだぞガブリ。普段からお前のことを狙っている先輩だ。部屋に連れ込んだら最後、あ~れ~でキャーッ! ……気付けば、夜が明けていた。そうなるのがオチだぞ」
「本多の言うとおりだよ。食べられる事が嫌なら、なんで誘いに乗ったの?」
ううっ、それは仕方が無いじゃないか。
誘いを断ったら、その日に食われていたかもしれなかったんだ(ラブホに連行されそうになった!)。
お互いをもっと知りたいといったのは俺だけど、泊まりは段階としてぶっ飛びすぎていると思う。