前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―
08. サバイバル序盤(なんでこうなるの!)
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突然だけど、例えば話をしよう。
小1になる俺が小学校に入学した頃、「わぁ。ここに6年間も通うのか」と、6年という月日の長さに呆気取られ、卒業なんて果てしない未来の話だと思い込んでいた。
が、いざ小6になると「もう卒業の年なんだなぁ」6年間なんてあっという間だったなぁと思い出に浸ってしまう。
果てしない未来がまさしく現実に、そして目の前に現れて、走馬灯のように懐古の念を抱くわけだ。
当時小1だった俺には6年後には小学校を卒業するなんて日、到底想像もできなかったわけであり、おとぎ話でもされているような気分になる。
でも結局は6年後、遅かれ早かれ卒業の日を迎えてしまう。
現に俺は小学校を卒業し、中学校に進学した。
つまり、何が言いたいのかというと“その日”は必ず来るというわけだ。
来年の7月10日には俺の17歳の誕生日が来るわけだし、私立エレガンス学院を卒業する日だって必ず訪れるわけだし、4年後には成人式を迎える日も当然来るわけだ。
そうさ、来るんだよ。
来ちゃうんだよ、悩んでも嘆いても頭を抱えても“その日”が来るんだよ。畜生。
「ああああっ、来ちゃったよ、今週の土曜と言っていたこの日が。どーしよう、今日は持久戦だぞ。生き残れるのか、俺! 生き残らないと男の責任という二文字がぁあああ!」
俺の住むアパートの前で、豊福空と呼ばれた男は外泊道具の詰まった通学鞄を荷物に、延々頭を抱えて悩んでいた。
いやフツー悩むだろ、自分の貞操の危機が分かっているんだからさ。
今晩のことを考えるとおぞましくてオゾマシクテ。
流されるんじゃないぞ、とか、逃げ切るんだぞ、とか、先輩襲ってこないよな、とか、色んな不安が重なって一つの巨大な悩みが出来上がる。
その悩みがまた俺に圧し掛かって悩みに、不安プレス、悩み、不安プレス、悩み、エンドレス。
悪循環である。