前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―

02. 恋うらら学食堂




□ ■ □


四時限目終了のチャイムが鳴る。


「今日はここまで」


先生の合図と共に学級委員が号令。

挨拶が終わると、クラスメイト達は机上に載っている教科書等々を片付けながら近所の奴等とのびのび駄弁り始める。今から昼休みだ。 


和気藹々のほほんと喋っているクラスメイトを尻目に、俺は急いで片付けをしていた。

なんでって、そりゃ身を守るために、今すぐ教室を出ないといけないから。

グズグズしていたら来ちまうんだ。

誇り高々に『攻め女』と自称している肉食動物が。


あの肉食動物が今こっちに向かっていると想像しただけで……うぅ、俺の背筋に冷たいものが走る。

相手が美人というのが救いだと思うけど、それにしたってあのあたし様な性格、勘弁して欲しい。美人が台無しだって。


俺は大きく溜息をついた。

あの“ろくでもない出逢い”から、俺の毎日の学校生活は戦場と化している。

目を閉じればホラ思い出す。

登下校での先輩の待ち伏せ攻撃。

毎度まいど、靴箱に先輩が待ち伏せているんだ。

そして開口一番に「挨拶はキスで始まりキスで終わる」なんてメッチャクチャなことを言ってくる。


大声で言うもんだから毎回注目の的。悪い意味で泣けてくる。


ある時は移動教室での偶然と思えない鉢合わせ。移動する度に先輩に会うってどういうことだよ。

もしかして俺、見張られているんじゃねえの?

時々視線を感じるし……考え過ぎかもしれないけど。


ある時は昼休み始まった途端の奇襲攻撃。

この時間が俺にとってイチバン悩ましい。先輩の猛烈アタッが凄いから。


嗚呼、何度濃厚なキスをされたか……両手両足の指は足りないくらい襲われかけたぞ。俺。


まだまだ思い出(という名の被害)はあるけど、とにかく数々のことを先輩はしでかしてくれたから学校中で噂が立っちまった。


『二年の竹之内財閥の娘と一年の一般人が付き合い始めた』ってさ。


先輩がどっこでもアタック&アピッてくるせいでクラスの中じゃ既に公認の仲。

「早く付き合ってあげなさいよ!」

鈴理先輩寄りの女子達からは反感を買うし、

「羨ましい、でも同情もするぞ!」

男子達からは羨望と同情を向けられる。

嬉しくないかって言ったらそりゃ……先輩は美人さんだし、ナイスバディだし。

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