前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―
10. サバイバル休憩(ちょっとイイムード)
キャシーの猛烈な構って攻撃から、どうにか脱した俺は犬達と暫し戯れて退室。
手洗い場で洗面させてもらった後、中庭をグルッと散歩して先輩の部屋に戻った。
そこですることがなくなったから、取り敢えず変な展開に持っていかれないよう、俺は勉強道具を取り出して先輩に勉強を教えてもらう戦法を取った。
「俺……特待生なんで」
もしも成績が落ちたら、特待生の名前が剥奪されてしまうのだと説明。
剥奪されてしまえば学校に通えなくなってしまうと、尤もらしい言葉を羅列して先輩に勉強を教えてくれるよう頼み込む。
快く引き受けてくれた先輩は、テーブルに俺を誘導して「何処が分からないんだ?」早速質問してきた。
椅子に腰掛ける俺は、「化学なんっす」ガックリと肩を落とす。
「昔から駄目なんっすよ。理科系。数学はそうでもないんっすけど……あー……化学記号とか、見てるだけで頭が痛くなってきた」
「あたしは理系だからな。そこら辺はなんとかなりそうだ」
「ありがとうございます。ほんと剥奪だけは洒落にならないんで……中学と高校じゃ勉強の内容、格段に違いますよね」
ついていけるかどうか不安だと吐露する俺に、「大丈夫だ」継続して勉強すればなんとなかると先輩は励ましてくれる。
もしも分からなかったら自分に聞けばいい、肩に手を置いてくる彼女に目尻を下げて俺は頷いた。
そうだな、まだ入学して半年も経っていないんだし、弱気になってもしょうがない。
ノートを開く俺は教科書を見つつ、先輩に分からないところを質問する。
丁寧に答えを返してくれる先輩は、答えだけじゃなくてノートの取り方や纏め方も教えてくれた。
乱雑にメモするんじゃなくて、メモするスペースと板書するスペースを分ければいい。
助言に俺はなるほどと手を叩いて、早速ノートの書き方を最後の見開きページにメモしておく。後で有効活用するために。
「空は本当に勉強に対して熱心だな。特待生になるのも頷けるノートだぞ。ただ……字が小さいが。極小だぞ、これ」
「だって字が小さい方がよりノートスペースが取れるじゃないっすか。節約っす! 大丈夫、ギリ読めますし」
先輩は複雑そうな顔で俺のノートを見下ろした。
豆粒米粒みたいな字だと彼女は苦笑い。