前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―
「金の有無で人の気持ちなんて変えられないとは思わないか? 安心しろ、あんたが思うような軽い気持ちで、あたしはあんたに接しているわけではない。本気であんたを所有物発言している。
もしそれで不安なら、あんたにちゃんと……ん? おっと、チャイムが鳴ったな。残念だ、折角良いところだったというのに。随分長く話していたようだな。食事も平らげていないというのに」
腰に手を当てる鈴理先輩は次のチャイムで教室に戻ると、椅子に座りなおしてフォークを手に取った。
「もやし炒めだけでも頂かないとな」
折角半分にしたんだ、勿体無い。
そう言ってもやし炒めを口にしている。
オムライスの方が数十倍美味いだろうに、鈴理先輩は真っ先にもやし炒めを口に運んでいた。
一方、俺は赤面したままぎこちなくオムライスを口に運んでいた。
だって先輩から貰ったものだし……な。
俺は弁当だから持ち帰ることも出来るけど、できることなら此処で食べてしまいたい。
先輩と一緒に食べたいっていうか何ていうか。
(反則だよな。ああいう風に言ってくるなんて。ほんと男前、じゃない女前)
本当に俺のこと……好きって言ってくれているのかな。
もしも言ってくれているなら……って、もう、俺が女みたいに悩んでどーするんだよ。これじゃまんま立場逆転だっつーの!
チラッと前方を見やれば先輩と見事に視線がかち合う。
先輩が女性らしく笑ってくるもんだから、うっと俺は言葉を詰まらせてしまう。
誤魔化すようにオムライスを掻き込んだ。
冷え切っていたけど、オムライスは凄く美味しかった。