前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―
03. 正反対カップルの誕生(かもしれない)
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午後の授業は上の空になることが多かった。
ノートは取っているけどちっとも頭に入らないんだ。
取っている文字がただの記号に見えて仕方が無い。
読めるけど理解していない、そんなカンジ。
成績は下げられないんだけどな。
一応補助奨学生なんだ。
成績が下がったら学費免除が白紙にされちまう。
何度目かの溜息をついた。
だってなぁ。鈴理先輩に男前……じゃない、女前に一丁前に口説かれたらな。
人のことを所有物だと連呼する反面、真面目な顔で好きです発言もしてくる。
金の有無であたしの気持ちなんて変えられない、なんて言われたら、こっちは嫌でも意識する。
軽い気持ちで接しているわけじゃない、鈴理先輩は俺にそう言った。
けど、俺達は付き合っているわけじゃない。
一方的に先輩からアタックを受けているだけ。
ちょっとアタックの仕方が問題あり、だけど、こんな俺のことを好きだと言ってくれる。
いやそれどころか、セックスしたいと言ってくれる……先輩、順序が間違っていると思うんだけど。
本当に俺のことを好きだって言うならまず、好きから始めるもんだろ。
俺等の出逢いってキスから始まっただろ?
イヤーン発言から始まっただろ?
キスに次いで性交しましょう、だなんてどんなアピール法?!
「それともあれが先輩なりのアピールなのか」
俺は頭を抱えた。
相手は財閥のお嬢様でやや常識に欠けた人だ。
あれが彼女なりのアピール法だって言われればスゲェ納得。
でもだからってあんな口説き方あるか?
普通に口説いてくれれば、平凡男子の俺なんか、一瞬で落ちるっていうのにさ!