前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―
「あたしと観覧車に、な。空、あんた、そんなにあたしに食われたいか」
可愛いところあるじゃないかと笑う先輩に、
「貴方になら喜んで」
微笑を零して彼女を見やる。
とんでも発言に彼女の方が度肝を抜いた。
先輩、これは冗談じゃないよ、今は無理でもいつかは食われてもいい、そう思う俺がいるんだ。
もうシチュエーションとかどうでもいい。
カッコワルイことに泣きっ面のままだけど、有りの儘に過去の自責を吐けた今、先輩に対する気持ちも伝えられる気がする。
「貴方となら、セックスをしてもいい。いや、俺はしたいんだと思います。学生期間中は健全に付き合いたいと願いつつ、何処かで先輩を欲している。
いつ頃だったか、先輩の所有物になっていることが当たり前になっていた」
これからもそんな関係で良い、俺達はそういう関係で成り立っているんだから。
俺は先輩の所有物でヒロインだ。彼女が望む限り。
だけどね先輩。
勘違いだけはしないで。
俺は貴方の攻めに屈して所有物になっているわけじゃない。貴方が好きだから、その在り方を受け入れるんだ。
「宣言通り落とされました。強引な貴方に、俺は落とされましたよ」
ふっと音なく動き、俺は肩を並べる彼女の右頬に手を添えて柔らかな唇を奪った。
初めて俺からの意思でするキス。
以前、先輩に煽られるがまましたことはあったけれど、今度は正真正銘俺の意思が宿ったキスだ。
食むように唇を重ねた後、俺は彼女に気持ちを伝えた。
「鈴理先輩、好きです。どうしようもないところまで落ちました。責任取って下さい」
一瞬の間。
呆けていた先輩の顔が見る見る赤面し始めた。あ、貴重だな、これ。
酸素を求める金魚のように口をパクパクした後、「くそっ!」盛大に舌打ちを鳴らして俺から視線を逸らしちまった。
コーラを自棄一気飲みし、腰を上げてずんずん缶をテーブルに置くと、こんなハプニングは予想だにしていなかったと唸る。
前から思っていたんだけど、先輩って攻撃力はすこぶるあっても、防御力はそんなにないんじゃ。
なんだか先輩を赤面させた事が嬉しくて、俺は一笑を零す。