前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―


かくして先輩のヒッジョーにありがた迷惑なプレゼントを貰った俺は、取り敢えずそれを家に持って帰ることにした。

捨てることはできない。

それは先輩の気持ちを捨てる行為と一緒だし勿体無い。


だからって返しますとか言った日には先輩、どんな仕置きをしてくるか……俺に残された選択肢はこれを家に持ち帰って、根気強く読破することだ。


感想文うんぬんかんぬんはまあ、一先ず置いといて、読破しないと感想も書けないしな。

嘘は書けないもんなぁ、先輩熟読しているみたいだし。


家に帰ると早速俺は家着に着替え、ケータイ小説文庫と十分程度睨めっこした後、どれから読もうかとタイトルを見比べ、一番マシそうなタイトルを選んで読書を始める。


タイトルは『星の王子さまならぬ、意地の悪い王子さま』


五分後。

「なんでこいつ、こんなに意地悪く女の子に命令できるんだ? 同じ男として意味分かんないんだけど。好きな子を苛めたいってのにもほどがあるだろ!」



十分後。

「ふ、普通放課後の教室でお触りするかっ?! 制服に手を突っ込んで、お、おにゃのこの、ぶ、ブラのホックを外すとかっ、うわぁああああああ!」


三十分後。

「うーん、そこで別れちまうか。うーん……いやでも、うーん、うーん」



一時間後。

「……こいつ等、学生でヤっちまった」


どうにか一冊を一時間と十分で読破した俺は、遠目を作り、


「もっと感想が書きやすそうな本ないかな」


紙袋に手を突っ込んでガサゴソ漁る。

知っているんだからな。本屋でちょい勉強したんだからな。

フツーに青春ものの小説とか、泣ける小説とかあるのを知っているんだからな。もっとこう、青春くささを感じられるようなものは……タイトルを見る限りなさそうだ。


くそう、さっきの内容を思い出すとさ、めっちゃ身の危険を感じるんだよ。


だって先輩、男ポジションに憧れを抱いているから。

この本に出てくるめっちゃ意地悪な王子があっらぁやだなことをしたいと……ううっ、無理ムリムリムリ! 俺はあんな意地悪されたくない!


赤面しまくるような意地悪されたくっ、ああああっ、思い出しただけでも辛い、ほんと辛い!


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