前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―






翌日の昼休み、2年F組(女クラ)にて。


「どうだ、空。昨日、話していたアリス服の出来栄えは! このレースエプロンが可愛さを引き立ててると思わないか?!」


ででーんと鈴理先輩が胸を張った。

むしゃり、握り飯を口に入れて咀嚼していた俺は見せ付けられたアリス服に絶句している最中だった。

なんでかって、そりゃあアータ、アリス服とやらがこの教室に持ち込まれているからだよ。


まさか学校に持ってくるなんて一抹も思っていなかったんだよ。

嗚呼、油断していた、攻め女の行動力。


わざわざ教室に持ち込んで、宇津木先輩や川島先輩、んでもってなんでか俺の隣で飯を食ってる大雅先輩にアリス服を見せつけた後、再度俺に見せ付けて「可愛いだろ、な?」同意を求めてくる。


ろくに噛んでいない白米を丸呑みした後、「そうっすね」俺はどうにか笑みを返して、弁当を持ったまま席を立った。


さてと、残りは自分の教室で食うか。

だけど残念な事に背後から先輩に肩を掴まれて道を阻まれる。わ、分かってはいたさ。分かっては。


でも希望は捨てたくなかったんだよ。


「空、何処に行くんだ。折角持ってきたんだ。じっくり見てやるのが礼儀だろ。安心しろ、今日はこれを着ろなんて言わないしな」


え……マジで。

ちょっとは先輩、成長して俺の主張を受け入れてくれるように。


「これは空が本調子になってから着てもらうことにする」


そうでもなかったか。

一応俺の心情を配慮してくれているみたいだけど、あんまり配慮という配慮もしていない。寧ろ配慮していないっすよね、先輩。


青褪める俺に、「着ちまえ」大雅先輩が揶揄してきた。

男が着たらさぞキモイぞ、なんて現実発言をするもんだからもっと青褪める。


ですよね、俺が着たらキモイっすよね。萌えなんて何処にも発生しないっすよね!

だけど鈴理先輩は大雅先輩に馬鹿だろと鼻を鳴らして、アリス服を彼に向けた。


「空が着てキモイわけないだろ。いいか、男がスカートを履いても似合う奴は似合うんだ。空は当然に似合う類に入る。ま、大雅も似合う類だから安心しろよ」 

「そう言われて嬉しい、わけねぇだろうが!」

「なんだ。言われたいから嫉妬してたんじゃ「アホかあぁあああ!」


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