前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―
どんまいっす、大雅先輩。
見事に弄られキャラに成り下がってますっすよ。
空笑いしていると、
「二階堂は素直じゃないな」
川島先輩が面白い話題を見つけたように話を切り出してくる。
なんだか、川島先輩、すっげぇ意地の悪い顔を作って……ヤーな予感。
「素直に言えばいいじゃんか。豊福のアリス服姿が見たいって。なあ、百合子」
「まったくですわ。大雅さんったら空さんに、あんなことを言ったんですもの。キャッ、いけませんわ。いけませんわ。空さんには鈴理さんが……でも、まあまあまあ!」
ひとりで盛り上がる宇津木先輩に俺と大雅先輩はゲンナリと顔を顰める。
この腐女子さん、どうにかしてくれ。
俺達大変な妄想をされちまっているじゃアーリマセンカ。
大雅先輩の苦労がちょいと分かってきたぞ。
あと川島先輩、なに彼女を焚きつかせているんっすか。確信犯でしょ。
完全に蚊帳の外にいた先輩がキョトン顔から一変。
素っ頓狂な声を出して「大雅っ、あんたそっちに?!」、当然大雅先輩は即答で言うんだよな。
「ちっげぇよ!」
ははっ、皆ユカイな人達ばっかりね。
「ちなみに百合子っ、あんたの妄想では空はどっちだ。当然女ポジションだな?!」
「ええ、勿論ですわ」
……え゛ええぇええええっ、何言っているんっすかこの人っ?!
彼氏がいたらん妄想されているのに、着眼点をそこにあてる意味が分からないんだけど!
お、おぉおお俺、男っ、女ポジ、うぇええええい?! なんか色々と混乱っ、混乱っ、大混乱なんだけどぉおお!
「先輩っ!」俺の呼び声に、「仕方が無いではないか」先輩は当然のように答える。
「人の趣味をどうこう言う権利は誰にもないだろ? 百合子が攻め女を認めるように、あたしも腐女子を認めるさ。まあ大雅と空のいたらんカップリングも、所詮は架空だからな。寛大な心で見てやると決めている。百合子はあたしのために小説を書いてくれているしな! おっと三次元のあんたはあたしのものだぞ?」
次元の話なんて知るか。
仮に一次元、二次元、三次元の俺があったとしても、次元の豊福空は俺、豊福空自身のものなんじゃないんっすか?!
「ほ、本人の御心は聞かないんっすかね! 妄想されている本人の御心は!」
「人の妄想は誰にも止められない。妄想は無限の可能性を秘めているのだぞ、空」