前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―
なに、名言作ってやったみたいなお顔してくれるんっすか。
作ったとしても迷言っすからね。
絶句して顔を強張らせていると、宇津木先輩がきっらきらとした目で俺を見てきた。
な、なんっすかその目。
妄想に膨らんだ、その目。
そんな目で俺を見ないで下さい。
すっげぇヤな予感がするじゃないっすか。
ジーッと見つめてくる宇津木先輩から逃げるため、俺は別の方向に視線を流した。
取り敢えず視線を流したのは片恋相手にいたらん妄想をされている被害者。
某先輩は、大きく溜息をついて弁当を口に運んでいた。もう慣れっ子みたいだ。
「兄貴の次は豊福か」
どんな妄想されているんだろうな、切ないぼやきを聞いてしまう。
大雅先輩諦めちゃ駄目っすよ。先輩の好きな人は宇津木先輩でしょ!
お兄さんや俺に恋慕を抱いているとか何とか哀しい妄想をされちまって、それでいいんっすか?!
先輩は俺様っすよ! いや貴方様は本命に対して残念ベーコンアスパラ巻き系男子ですけど。
でもでもでも、此処で諦めてどーするんっすか。
「大雅先輩ファイト。妄想に負けるなです」
「……キャツの妄想前で兄貴と何度挫折したか」
深い溜息をつく大雅先輩に、「諦めないで下さい!」俺は盛大に声援を送った。
「もう付き合っちまうか? チョーダイジニシテヤルゼ」
ついにはカタコトを吐き捨てて超投げやりになってしまう大雅先輩は、考えることも億劫らしい。
「俺には鈴理先輩がいますから」
勿論俺は全否定。
ヤケクソにもほどがあるっすよ。
大雅先輩の自暴自棄発言により、宇津木先輩が「あら、まあまあまあ」すっげぇ嬉しそうに見つめてくるんだよ、俺等のこと。
だからそういう目で見ないで下さい、宇津木先輩。
俺の中で貴方様のイメージが急降下しています。止まるところを知らないっす。
「まったく、大雅はヘタレだな。さっさと百合子をものにすればいいものを」
ボソリ呟く鈴理先輩の台詞に、俺は思わず大雅先輩をフォローしたくなった。
ヤーンな妄想されたら誰だって心挫けますよ。片恋から妄想されるなら尚更っす。
これは宇津木先輩をものにするしないの問題じゃないと思います。