前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―


ドタバタな昼休みの話題は放課後まで引き摺った。

あ、俺と大雅先輩のいたらん組み合わせの話うんぬんかんぬんじゃなく、アリス服のことで鈴理先輩と放課後も会話が広げられていたんだ。


着る着ないじゃなくて、デザインが可愛いだろううんたら。

着るお相手が先輩ならスンナリ賛同するんだけどな。

着るお相手が俺……幾ら服が可愛かろうと着る相手が俺じゃあ簡単には頷けないってもんだ。な?


そうそう、今日は鈴理先輩と大雅先輩が一緒に帰るんだって。

なんでも上辺は許婚だから、それを踏まえてお互いの管轄している土地を視察するとかなんとか。

詳しい事情は分からないけど、彼氏としてはすげぇ複雑だけど、まあ、しゃーない。鈴理先輩のことも、大雅先輩のことも信じている。

軽く嫉妬はするけど、それだけだ。


二人とも優しいことは分かっているからさ。


にしても大変だよな、金持ちって色んな仕事や習い事が待っているんだから。

凡人には分からない世界だ。


正門前まで鈴理先輩、そして大雅先輩と一緒に駄弁っていた俺は、


「じゃあこれで」


二人に頭を下げてまた明日にお会いしましょうと挨拶。


「おう」大雅先輩は軽く手を挙げて、「またな」鈴理先輩は微笑を向けてきてくれた。

 
「気ィ付けて帰れよ。最近のお前、なんか空元気が多いからな。ぼーっとしていると、事件に巻き込まれちまうぞ。てか、送ってやればいいんじゃね? べつ急ぐ用事でもねぇしな。俺は鈴理の迎えに乗るし」


「そうだな。空、乗っていかないか?」  


「いえいえ、悪いからいいですよ。俺の家から目的地まで行くよりも、このまま目的地に行った方がお得です。今の世の中、ガソリン代って馬鹿になんないっすから! ガソリン一滴無駄にしちゃあなんない。一滴無駄にする奴は一滴に泣かされ、一円を笑う奴は一円に笑われる。

家計を火の車にしたくないなら、無駄は省くべきです。
ええい無駄遣いなんてベラボウチクショウです。俺は、おれは、無駄遣いなんて認めないっす!」


「……豊福、てめぇはどこぞの主婦か」

「……空は相変わらずケチ、じゃない、節約精神が強いな」

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