前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―


「よし。その口、少しばかり仕置きしてやろう」


え。


「やややややっぱ言います! その普通の台詞でありながらヤらしーく聞こえる台詞を言わせて下さい」


もう遅い、房を銜える彼女は悪魔のようにニンマリ笑った。

しぃしししし仕置きって何するんっすか、こっちは怪我人なんですけど。

キョドる俺を余所に、先輩は一房口内に押し込む。


そのまま唇を重ねてくるんだけど、俺の口腔一杯には蜜柑の味。


ちょぉおおお先輩っ、これはっ、これはっ! うわっ、うわぁああああ! 



(※暫くお待ち下さい)



数分後。

ぐったりとベッドに沈んでいる俺は、「ありえないっす」羞恥のあまり唸り声を上げて、身を隠すように毛布を被っていた。


笑声交じり、ご機嫌ルンルンの先輩は「まだ蜜柑いるか? 剥いてやるぞ?」意地の悪い質問を飛ばしてくる。


「いらないっす!」


突っ返して俺は毛布の中でうんぬん唸り続けた。

こんなのないっすよ、なんっつー仕置きっすか。普通に蜜柑食いたかった。え? 普通じゃない蜜柑の食い方をしたのか?

結論から言えば、先輩から剥いてもらった蜜柑は全て平らげましたとも。美味しかったですとも。


ただ俺の名誉のために、どんな風に食べたかはそっとしておいて欲しい切な問題だ。


これから先、蜜柑を食う度に赤面しちまうような食い方をしたってことは補足としておこう。


「空、ヤラシイ食べ方だったな。なんというか必死で可愛らしかったぞ。途中から涙目になって蜜柑を飲み込むのも一苦労していたところは、一番の大興奮したポイントだ」

「悪趣味、先輩の悪趣味! チョー蜜柑嫌いになりそうっす!」


うわあああああ蜜柑大好きなのに、大好きなのに、チクショォオオ! 先輩のバッキャロォオオ!



「何を言う。ヤラシイ空が悪い。もっと触っていけば、空はちょっとしたことでも敏感になってくれそうだ。な?」



壮絶に悶えている俺に笑うや、布団を捲って耳の後ろをべろんと舐めてくる。

ひっ、身を硬直させる獲物にまた一笑。


首を動かせば、肉食はひとの唇を食み、そのまま自分のものと重ねる。


軽い口づけを交わした後は、その唇が滑り悪戯気に首筋に当たった。


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