前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―
でも、今に見てろっす。
今日の俺にはちゃんと計画があるんっすからね。
押せ押せ攻め攻めな先輩に勝つ自信はないけれど、赤面くらいはさせる計画があるんっすからね!
草食受け男だって逆襲をするんだ。
そう心中で決意、叫ぶ俺にはとある計画があった。
別に大したことじゃない。
でも前々から決めていた計画だ。俺にとっては大事な計画を放課後、決行する。
「うむ、空。あんたが来たがっていた場所とは此処か? まだ高所恐怖症が治っていないというのに、これはハイレベルじゃないか?」
「ははっ、ワカッテイマス。今の俺じゃレベルが足りなさ過ぎますよね」
放課後。
運転手の田中さんに頼んで連れて来てもらった場所は、某アウトレットモール。
そこの敷地内に突っ立っている俺と鈴理先輩は、ただただ空を仰いで沈黙を作っていた。
ああすげぇな、あの高さ。
飾られているゴンドラが小さく見えらぁ。
車輪状のフレームがやけに馬鹿でかく見える。
呆然と見上げている先にあるのは先輩が大好きな観覧車。
放課後に来た時刻が時刻だからか、夕陽が向こうに見える。
車輪状のフレームも夕陽色に染まって綺麗だ。
まだできたばかりの観覧車だから、向こうには長蛇の列。
主にカップルバッカで桃色オーラが向こうでムンムン。
一応俺等もカップルになっているんだ。あそこに入りたいけど、俺が高所恐怖症だから。
無理して乗ろうとは思わない。
情けない話、高所恐怖症はまだまだこれからも付き合わないといけないトラウマで、窓から景色を見るのもすごく苦労している状態だ。
先輩が一緒に景色を見てくれようとしても、調子の良い時じゃないと窓にさえ近付けない。
階段は平然と上り下りできるようになった。記憶も戻った。トラウマの原因も分かった。
プラマイゼロ、結局前の俺と同じ状態だ。