前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―
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「はあ……空。あたしの愚痴を聞いてくれ」
突然始まった愚痴トークに俺は驚くしかなかった。
「何かあったんすか?」
先輩に疑問を投げ掛ければ、大きな溜息をつく鈴理先輩がそこにはいた。
何か嫌なことでもあったのかな。
心配を余所に先輩は重々しく口を開く。
「あたしは心底恋愛小説を愛しているのだが、あ、無論、空も愛しているぞ。どちらを愛しているかと問われれば、空に決まっている。安心しろよ? で、恋愛小説の話になるのだが、あたしのマイブームはケータイ小説なんだ。毎日のように携帯を弄くっては小説を読み漁っている」
愚痴の内容は置いておいて、愛している発言はスルーするべきだよな。
ツッコんだら最後、襲われかねない。
「へ、へえ。携帯って便利っすね。小説読めるなんて。携帯は持っていないですし扱ったこともないっすから、イマイチどういうものか分かんないっすけど……それで何か問題でもあったんっすか?」
「ケータイでの恋愛小説は星の数ほどあるのだが、どれを読んでもあたし好みがないんだ。どれを読んでも男がリードするものばかり。いや、それはそれで素敵だと思う。
しかし星の数ほどあるのだから、少しくらい攻め女の恋愛小説があっても良いと思うのだ!
女王様というものがあるが、イマイチあたしが求めているものとは違う。
今のあたしの気分は、こう甘酸っぱい青春モノ、で、初々しい攻め女と受け男の恋愛話が読みたい。
だが見つからない。見つからないのだよ、空。女がリードする話がないのだよ。攻め女が何処にもない。嗚呼、萌え不足になりそうだ!」
うわぁああっ、萌え不足だ! 萌え不足で死んでしまいそうだ!
俺の隣で机に伏せて嘆く先輩に、俺は引き攣り笑い。
それが愚痴っすか、心配して損した。
財閥のお嬢様が萌え発言って。
だけど先輩はしょぼんと落ち込んじゃっている。
先輩にとって悲しい出来事なんだろうな、攻め女と受け男の恋愛話が見つからないこと。
先輩の嗜好って他の人とちょっと違うからな(おかげで俺は被害バッカ遭うけど)。