前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―
「鈴理にプラトニックラブなんてムリムリ! 望む方が無理って言うかさ。鈴理の読む恋愛小説は過激なヤツが多いし。
潔く諦めて食われることが豊福の幸せだと思うぞ。情事ってのは最初だけ時間を取るだけで、あとは意外とパパパァーっと流れてあっという間に終わっちまうって」
「まあ、早苗さん。鈴理さんが普通に食べるとでも思いまして? それはそれは濃厚なものになると思いますわ。
ちゃんと準備と覚悟をしてから事を済ませないと。空さんがきっとトラウマになると思いますわ。それも時期に良き思い出になるとは思いますけれど」
のほほーんと談笑している川島先輩と宇津木先輩。
会話の内容からして俺を救ってくれるわけではなさそうだ。
寧ろ、鈴理先輩を全力で応援している。
そりゃそうだよな。
オトモダチだもんな。先輩を応援するだろうな。
ただ先輩のアタックを受ける俺の身にもなって欲しい。
性交なんてできるわけないだろ。
そういうのに関しちゃまだ無知だし、未知な領域だし、怖じる気持ちも抱くし。
また一つ溜息をついて俺は食べかけの弁当に目を落とした。
本日の俺の弁当の中身は日の丸弁当の“日”がないバージョン。つまりただの白飯。
だけど先輩が持参してきた弁当のおかずを半分俺に恵んでくれたから、とっても豪華。
鈴理先輩が俺のためにわざわざ作ってきてくれたんだ。
先輩、超料理が美味くてさ、おかず一つひとつに感激。
俺は先輩がくれたからあげを箸で摘まんでジッと見つめる。
「からあげ。三か月ぶりのからあげ。どうしよう、俺、こんな豪華な物を食べたら罰当たりそうっす! せ、先輩、ほんっとにいいんですよね? 俺、食っちまいますよ? 後で返せって言われても困りますよ!」
途端に先輩は苦笑い。
「空、おかずを一つ食べる度に同じ事を聞いているぞ。
何度も言うが遠慮なく食べろ。気遣う必要なんて何処にも無い。あたしが好きでやっているんだから」
「きょ、恐縮っす。それじゃからあげ、有り難く頂きます」
口に入れた瞬間、俺は感激のあまり泣きそうになった。