前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―
からあげ、美味い、美味いよ。
肉汁が口の中でぶわって広がっている。
泣きたいくらい美味い。
ジーンと感動に浸っている俺に一笑する先輩は自分の席に掛けていた紙袋から新たなタッパーを取り出す。
「空。クッキーも焼いたんだが後で食べてくれないか? 本当はケーキを焼いて持って来ようと思ったんだが、空はどんなケーキが好きか分からなかったからな。今日はこれで勘弁してくれ」
目の前にクッキーの入ったタッパーを置かれて、俺はカチンと固まる。
だってよ、先輩の手作りクッキーが目の前に。
クッキーなんてなっかなか食べられる物じゃないって。
どうしよう。こんなに贅沢しても良いのか。
でも超嬉しい。嬉し過ぎる!
「空はどんなケーキが好きなんだ? もしくはいつもどのようなケーキを食べているんだ?」
先輩の質問に我に返った俺は笑顔で答えた。
「ホットケーキっす」
「ホットケーキ?」
先輩が首を傾げた。
通じなかったか?
お嬢様だもんな。知らないかもしれない。
「ほら、あれっす。フライパンで焼けるヤツっす。一枚一枚は平べったいんっすけど、積み重ねるとボリューム満点のケーキになるヤツっす。バターとかのせるじゃないっすか! 世間でははちみつってヤツを掛けたりするそうっすけど、はちみつは高くて俺の家では買ったことがありません」
「……いや、物は知っている。あたしが言っているのは、もっと凝ったケーキなのだが」
「ケーキ……凝ったケーキ。でも、俺の誕生日ケーキはいつもホットケーキだったしな」
あれはすげぇ美味い。
積み重ねた分、沢山の量が食える。バターを付けて食べると尚美味い。
だから是非、ホットケーキを作って欲しいとおねだりする。が、先輩は血相を変えて俺の両肩を掴んできた。しかもガクガク揺すってくる。