前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―
05. 親衛隊vs草食
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エビくんから親衛隊の話を聞いてから俺は何かと周りに気を配った。
例えば俺と先輩が一緒にいる時、ガンを飛ばしている輩はいないか。
物を投げてくる輩はいないか。
突撃してくる輩はいないか。
人にどうこう言われて鈴理先輩と別れるつもりは無いけど、やっぱ警戒心は抱いちゃうわけだ。
俺だって人から恨まれたり、嫉妬心を買ったりするのは気分が良いものじゃない。
だけど親衛隊の動きどころか、俺と先輩の仲に茶々を入れる人はいても(例えばフライト兄弟とか鈴理先輩のお友達とか)、野次を飛ばす人はいない。
心配し過ぎなのかな。杞憂なのかな。
次第に俺は親衛隊への警戒心が薄れていった。
その分、俺を押し倒してこようとする鈴理先輩への警戒心を高めないといけなかったんだ。
このまま何も起こらず平々凡々と時が過ぎる。
そう思っていた矢先、ちょっとした事件が俺の身に降り注いだ――。
「あ……あれ?」
放課後。
いつものように身支度をして帰ろうとしていた俺は通学鞄の中にあるべき物が入ってないことに気付いた。
鞄の中身をひっくり返してもやっぱり無い。
「何処に行ったんだ」
心なしか焦っちまう俺の様子に気付いたエビくんが、「どうした?」と声を掛けてくる。
俺は早口で説明した。
鈴理先輩から借りている携帯がないんだって。
携帯を学校に持ってくるのは校則違反なんだけど、どうしても携帯の使い方が分からないから昼休みに先輩から扱い方を教えてもらおうと毎日持ってきていたんだ。
今日も昼休みに携帯の扱い方を教えてもらって、ちゃんと通学鞄に仕舞ったのに。
壊しちゃ悪いからって巾着袋に入れていた筈なのに。
巾着袋ごと無くなっている!
教科書の間や通学鞄の裏ポケットを覗き込んでみるけどやっぱりない。
嘘だろ、まさか……失くしちゃったってヤツ?