前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―
「どーしよう。鈴理先輩から借りたヤツなのに。携帯って高いんだろうな。弁償なんて今の俺の家じゃ到底できっこないだろうし」
溜息をつく俺にエビくんは落ち着いて、と声を掛けてきた。
「ちゃんと仕舞ったんだろ?」
優しく問い掛けてくるエビくんに向かって俺は力なく頷いた。
ちゃんと仕舞ったんだ。
しかも取られないよう裏ポケットに。
持ち出す時は失くしたら大変だって、意識してしっかり手に持っているし。
なのになんで無いんだ?
項垂れる俺の肩を叩いてエビくんがもう一度探してみようと、教科書やノートを綺麗に整理し始める。
「大丈夫だって空くん。僕も君が仕舞っているところを見ていたし。君は几帳面だから、壊したら不味いって思って別の場所に仕舞ったのかもしれない」
「だといいんだけど……でもちゃんと通学鞄の裏ポケットに仕舞ったんだ」
「どうしたんだ? 空。笹野」
俺達の様子に身支度をしていたアジくんが気付いたのか、こっちにやって来た。
「携帯が無くなっているらしいんだ」
エビくんが携帯のことを説明してくれる。
「空が失くすことはないだろ」
アジくんはちゃんと探したのかと眉根を潜めた。
「空がめっちゃ大事にしてたの俺も見ていた。教室戻ってきてから直ぐに茶色い巾着袋に仕舞っていただろ?」
「うん。そうなんだけど……無いんだ。ほんっと何処にいったのかな。鈴理先輩の連絡先が入っているのに」
俺は空っぽになった通学鞄をひっくり返し、上下に大きく振る。
これで出てくるとは思えないけど、なんとなく気持ち的に出てこないかって期待を持った。
でも出てきたのは紙切れのみ。
多分プリントだと思う。
何も出てこないことにガックリ肩を落とした。
やっぱり無い。
どうしよう、先輩から借りた大事な携帯なのに!
「ん? これ」
エビくんが出てきた紙切れを拾い上げて目に通す。