前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―
だから間違っても俺が女子高に通っているわけじゃない。
隣のクラスを覗けばちゃんと男子生徒もいるし、混クラもある。
したがって連行された俺は、女クラに連れ込まれただけで女子校に通う変態ではない。OK?
俺、豊福空は今年の四月からエレガンス学院に通っている。
この学校は超有名校なだけあって倍率も偏差値も目玉が飛び出るほど高い。
進路希望調査書を担任に出した時は、「お前正気か!」なーんて青い顔を作りながら言われたほどだ。
俺の学力が悪いってわけじゃなく、この学校のレベルが異常に高過ぎるんだ。
今じゃ良き思い出だけど、あの頃は大変だった。
「お前なら都立に受かるぞ。そっちを受けろ!」
担任だけでなく、学年主任にすら大反対されちまったんだからさ。
それでも俺は塾にも行かず(正しくは塾に行けず)、死に物狂いで勉強をして此処を受験した。
エレガンス学院一本だったんだ。
この学校を落ちたら、潔くバイト生活にでも勤しもうと思っていた。
父さんや母さんに「高校だけは出ておきなさい」と言われていたのだけど、エレガンス学院の受験料は半端なく高い。
豊福家は涙が出るほど貧乏だから、エレガンス学院の受験だけで正直一杯一杯だったんだ。
だったらレベルを落として都立校を目指せば良い話なんだけれど、エレガンス学院には『特別補助制度』と呼ばれる制度がある。
合格者の家庭に何らかの事情があって学校に通えない。また教材等が買えない。学校生活に支障が出てしまう生徒を補助してくれる特別制度だ。
教材、制服、学校に関わる金面はすべて工面してくれる。
自宅から学校までの通学中に掛かる交通費まで面倒を看てくれる有難い制度だ。
あ、ちなみにさっきも述べたとおり、俺は徒歩通だ。
いやはや、ここだけの話、我が家はその交通費をちょろまかして生活費に当てている。内緒だぞ。
閑話休題、執拗にエレガンス学院に拘る俺の狙いはまさにこの特別補助制度だった。
受かって制度に申請すれば、俺は確実に補助奨学生になれる。
それだけ俺の家は貧乏。
年収二百万もいかない、金欠家庭だ。