前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―

お金の苦労を知っている分、両親にはどうしても迷惑を掛けたくなかった。

学校関連のものすべてを工面してくれるのなら、俺だって気兼ねなく有意義に学校生活が送れる。

バイトだって事情があれば許可してくれる学校だから、何が何でも受かりたかったんだ。このエレガンス学院にさ。


とはいえ、当初受かる確率は二割にも満たなかった。


塾生と明らかに学力に差が出ていたんだ。


独学じゃ無理があるんじゃないかと悩んだ時期もあったし、周囲にレベルを落とせと言われ、そうするべきかと落ち込んだ時期もあったけれど、文字通り死に物狂いで勉強。勉強。暇さえあれば勉強。


反対していた教師達にも勉強を教えてもらってエレガンス学院を専願受験した。

鬼のような試験問題には泣かされたけれど、木枯らしが去ろうとしていた二月末。合格通知が学校に届いた。


通知発表は二者面談形式。

発表にドキドキしていた俺は桜が咲いたのか、散ったのか、ド緊張もド緊張。

担任に結果が入っているであろう封筒を渡された時は口から心臓が出そうになった。


封筒を開けられずに縮こまっていたんだけど、先に結果を知っている担任が怯えている俺を見かねて教えてくれたんだ。


涙ぐみながら、「豊福。頑張ったな。お前は皆よりも先に進路を決めたぞ」と。


合格したのだと教えてくれた担任の前で感極まり、泣いてしまったあの日も今では良き思い出だ。

高校生になれる。

親孝行ができた。

俺の苦労は報われた。

嗚咽を漏らす俺に、教えてくれた教師達がこっそり菓子をくれたこともまた良き思い出。


こんなにも苦労をしたんだ。


その分、エレガンス学院に入ったら、学院生活をエンジョイしようと意気込んでいた。



そしたら、これだよこれ。


念願のエレガンス学院に入学して一ヶ月。

まさか、まさか、俺にこんな運命が待っていようとは!


誰が想像したよ。女先輩に攻め攻めアタック(?)される、こんな近未来。

教室に現れた俺達の登場に驚きもせず(というか慣れたんだろうな)、クラスの先輩達は俺に軽く挨拶、鈴理先輩に深々と挨拶をした。

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