素直になれない
三年6組は一階にあった。
どうやら三年が一階、二年が二階で一年が三階といった風に、年を追うごとに一階に近付いていくらしい。
この学校は縦に長い校舎でなく、横に広い。即ち広さを重要視して建設されており、そのため一学年につき8クラスあってもそれを一階から並べることが出来た。
また公立とは思えない設備を誇り、ほぼ全室冷暖房完備である。そんな条件目当てに入学してくる輩も少なくはなく、七海も言ってしまえばその仲間だ。
ただ偏差値も高いのでなめてかかると痛い目を見るらしい。
ちなみに鷹山談だが。
と言うわけで、教室には何十メートル歩いただけで到着してしまった。
「準備はいいかい?」
鷹山にそう問われて七海は固唾を呑んだ。
反射的に頷いた自分を恨む。
転入生という境遇になったのは初めてではないが、それでも緊張するものはしてしまう。
しかし頷いた以上、鷹山が待ってくれるわけもなく、ガラリと音を立てたドアが開け放たれた。
深呼吸し手汗の酷い拳を握る。
そうしてから七海は一歩を踏み出した。