素直になれない


クラス中の視線が七海を貫いている。
ただ単純に疑問符を浮かべている。

乾いた喉を潤すかのように唾を飲み下した。
あまり意味のないそれに七海はちっと舌打ちし、七海の隣では鷹山が軽く紹介してくれている。
と言っても「今日からこのクラスの一員となる…」とかいうありふれた言葉だったけれども。

鷹山に自己紹介を促されて、七海は息を吐いた。







不安だ。
すごく居心地が悪い。

先ほどホームルームが終わり、今は自由時間だった。
次の時間に行われる始業式まで時間が余っているので、生徒たちは思い思いに自由を満喫している最中である。


しかし本当に居心地が悪い。
七海は名字の関係で丁度、教室の中心あたりに座っている。
左では男子がトランプをしていて右では女子が雑談をしている。
そこに挟まれる形で七海は座っているのだ。


七海は話しかけてくる人がいないことに、不安を抱いていた。
入学直後とは違い、大体のグループが決まっているだけに自分から話しかけるのも気が引ける。

一切結っていない自分の髪の毛に手を通し思案する。


もっと予想外の自己紹介をすればよかったのだろうか。
今更な疑問が頭を駆ける。
至って普通の自己紹介をした時点で、詰まらない女だと思われたのだろうか。
それは嫌だ。

自分を理解して貰えないまま、決め付けられるのは以ての外。絶対に嫌だった。
こうなったらやはり自分から話しかける他ないようだ。


椅子が床と擦れる音が教室に木霊する。


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